HISがInstagramマーケティングについて語っているイベント

企業のソーシャルメディアマーケティング実例~H.I.S.編~

H.I.S. Instagram event

3月29日、SNSマーケティングに特化したメディアCOMPASS主催の、「COMPASS Secret Salon Vol.2」というイベントが六本木ヒルズクロスポイントで開催されました。マーケター限定の招待制イベントで、「オフライン・オンラインの垣根を越えたコミュニティづくり」をテーマにしたセッションでした。
今回の記事では、そこで紹介されたH.I.S.の実際の「#タビジョ」ブランドでのソーシャルメディアの活用事例から、企業がSNSやインフルエンサーをどういう目的で利用していて、どういう運用が可能なのか、どこに利点があるのかなどをインフルエンサーマーケティングにおいて注目すべきポイントごとに具体的なイメージとして読んで頂けるような内容になっています。

コンテンツ

自社の商品をHPやInstagramで宣伝するのに、企業はもちろん写真を撮ります。旅行代理店であれば、ツアーで訪れるエリアの景色でしょう
プロのカメラマンを用意し、綿密に打ち合わせをして、最高の風景を「美しく」撮影するのです。
ただそうしたコンテンツは、同業他社にも制作出来ますし、消費者からすると正直代り映えしません。差別化が出来ないのです。

一方、インフルエンサー、特にインスタグラマーはどうでしょう。彼らは個々人が気に入ったスポットを、自分が好きな撮り方で、「個性的」に撮影します。インフルエンサーは、それぞれがセルフブランディングをする過程で、自然と他者と差別化をしています。個性のアピールで差別化をしていても、決してそれは独りよがりではなく、フォロワーからの共感を呼ぶものです。更に、インスタグラマーに限って言えば、よりInstagramで見栄えのするコンテンツの作り方も知っています。

H.I.S.はこうしたことを踏まえ、タビジョではInstagramでの施策に合わせ、親近感を覚えられやすいユーザーからのコンテンツを活用することを考えたそうです。Instagramのアカウントで投稿されている投稿はすべて、ユーザーからのものを活用し運用しているのです。

コンテンツのフォーマットとしては、Instagramの新機能であるストーリーズも積極的に利用しています。ストーリーズは、アップしてから24時間が経過すると消滅するという、企業からするとリスクのある性質を持っています。そのため、国内ではストーリーズを上手く活用している企業はまだまだ少ないのが現状ですが、H.I.S.では積極的に利用しています。
タビジョで選定した公式アンバサダーに、海外滞在中に旅行中の様子をストーリーズやライブを通して紹介してもらっているそうです。そして、ストーリーズなどの動画については、旅の持つ楽しい空気感や雰囲気がそのまま伝わりやすいと評価してらっしゃいました。これはアンバサダーからも聞かれた声だと言います。
ストーリーズでは、フィードにポストする投稿とは違い、何回も様々な角度で撮り直し、念入りに加工し、頑張って「インスタジェニック」に仕上げていく必要がありません。そもそも出来ないのです。だからこそ、その瞬間その瞬間のありのままの楽しさや興奮が伝わりやすいと言います。こうした新しいトレンドも敏感に察知し、積極的に取り入れる姿勢は素晴らしいです。
ソーシャルメディアのマーケターが予想する2017年

インタラクティブなコミュニティ形成

実は#タビジョでアカウント運用を開始する時、トラベラーズアカウントで既に先行しているものもあったそうです。「旅行のプロフォトグラファー」たちが、旅先での美しい風景を卓越した技術で美しい写真にしている、
人気のあるアカウントです。
ただここでもH.I.S.は、後発であることからコンセプトの差別化を意識しました。
プロトラベラーが撮る写真は素晴らしいクオリティでとても良いコンテンツだが、「見せる側」「見る側」と、
ユーザーの間で明確な断絶が生まれていると考えました。そこで、自社で運営するアカウントでは、そこまでの写真としてのクオリティは求めず敷居を下げ、見ているユーザーが「いつでも見られる側になれるかもしれない。」、そう思わせられる柔軟性を意識して、SNSならではのインタラクティブなアカウント作りを心がけました。結果、そのことによって、そうでないアカウントよりもフォロワーのコミュニティが活性化したのでしょう。
事実として、タビジョのコミュニティでは、オンラインからオフラインに飛び出し、ユーザー同士が自発的に全国各地で「タビジョ会」を結成する動きが見られています。
2017年、ソーシャルメディアのトレンド

#タビジョは、アカウントをスタートしたはじめの半年でユーザーから合計1万枚ものポスト数を生み出しましたが、現在はなんと10日で1万枚のペースでその勢いを加速させていると言います。それもこうしたユーザーを意識したコンセプトづくりによるものなのでしょう。

インフルエンサーとの関わり方

インフルエンサーマーケティングが国内でも注目され、現在では様々な企業がその効果を認識し始め、インフルエンサーは多くの企業から案件を受けています。
H.I.S.は、そのインフルエンサーの発掘・キャスティングという点において、自分たちの直接の競合であるその他の旅行会社だけでなく、他業種のファッションやコスメなどのブランドもライバルであることをよく認識しています。自分たちがキャスティングを考えているような人気のあるインフルエンサーは他社も同じようにキャスティングしたいということです。ですから、その上でいかに自社ブランドにより深く愛情をもってもらうか、理解し共感してもらうのかというインフルエンサーに対するリスペクトの姿勢を持っています。

更にインフルエンサー(アンバサダー)の選定基準もよくあるフォロワー数の多い人から順に選ぶというような手法ではありません。H.I.S.は自社でユーザーの中から起用することを考える時はまずコミュニティへの貢献度を見ます。どれだけそのユーザーが#タビジョを付けて投稿をしてるのか、普段のライフスタイルで旅とどのように関わっているのか、といったようなことです。そのためむしろ、フォロワー数は2~3000人の方が多いそうで、数字だけ見ればインフルエンサーとして起用されることの多い層と比較するとかなり少なめの印象でした。
タビジョたちは、その多くがセルフブランディングに気を遣っています。インフルエンサーも同じです。上記のようにインフルエンサーを理解しようという姿勢のあるH.I.S.ではこうした彼女たちの心理にも注目し、自社のアカウントで複数回取り上げたユーザーにメディアの記事作成なども依頼しています。インフルエンサー(アンバサダー)として依頼されることによって承認欲求が満たされ、自分のブランディングにも繋がるため、よくあるただの報酬などの一方的な対価だけで片づけるような関係性よりも更にお互いにとって良い仕事が出来るということがわかっているのです。

インフルエンサーの多くが一般人であるということもあり、上から目線でインフルエンサーに商品を送り付け、指示をし、投稿さえしてもらえればそれでいいという企業も残念ながら多くあります。しかしH.I.S.のような姿勢でインフルエンサーを理解しようと努力すれば、インフルエンサーとの間には信頼関係が構築され、結果として企業も様々な恩恵を得られることになるのです。

その他メディアやイベントなどへのスピンオフ企画

ここまで盛り上がった#タビジョブランドという資産は当然Instagramの枠を超えて別の企画にも飛び火しています。企業側の視点では、こういった部分が成果として最もわかりやすいのではないでしょうか。

オウンドメディア

・・・タビジョお気に入りのフォトスポットなどをマップで紹介している。

イベント

・・・表参道にある旅をコンセプトにした店舗「旅と本と珈琲とOmotesando」にて#タビジョへの貢献度の高い公式インスタグラマーを迎え、リアルイベントを開催。北海道など地方からも多くのユーザーが集まるという成功を収めた。

オフラインでのユーザーコミュニティ

・・・前述のように、全国各地でユーザー同士が結びつき、オフラインでのコミュニティが自発的に形成された。今後こうしたタビジョ会とのコラボ企画も検討中。

ツアープラン

・・・旅行代理店の商品といえばツアー、そのツアーにも新たにタビジョブランドのプランが設けられ、Instagramでもタビジョに人気のある観光地などへのプランが組まれた。

このようにして、様々な点でInstagramというSNSからブランド・コミュニティを確立させ、それを企業の資産としてビジネスにも上手く活かしている国内では稀な好例です。実際、今まで旅行代理店には特別こだわりなく、H.I.S.がアプローチしづらかった「どこも同じでしょ?」と思っていた層なども、そうした層が日常的に触れる機会を多く持つInstagram上からこのような企画を立ち上げれば顧客として取り込めるのではという期待もあります。

最近はインフルエンサーマーケティングが国内でも認識され、既に何度もインフルエンサーに商品を渡し撮影、投稿を繰り返してきた企業も増え始めています。そのような企業からは次のSNS(Instagram)運用をどのような戦略で行っていけばいいのかという相談もよく受けます。これからは消費者により一層深く関係構築を図っていく必要があり、企業からの一方的な広告や拡散ではなかなか上手くいかないでしょう。今回のH.I.S.の事例のように、これからは消費者や彼らを代表する存在(インフルエンサーなど)の心理にしっかり着目し、コミュニケーションを取り、その上で自社のメッセージに愛着を持ってもらえるようなコミュニティ作りが肝要です。弊社サービスexpausも、そういった関係づくり、コミュニティづくりの礎となれるようにお客様にご提案していきます。